72人が本棚に入れています
本棚に追加
幼い頃は禁じられていても、今は何が起きても心配はないという自信もあった。
そして静かに、扉を押してみる。
キイ……と、蝶番の軋む音がして、その内部が夕陽に照らされた。
扉の向こうは少し置いてから下り階段になっていた。
奥はランプも燭台もない、真っ暗闇だった。
少しだけ、弦一郎の心に恐怖の念が浮かんだ……
しかし今は好奇心の方が先であった。
丁度家の者も留守で、女中や執事や庭師にも見付かる可能性は低い。
そう思って次の瞬間には、一歩を踏み出し、しっかりと扉を閉めていた。
中は………
予想通りの暗さだった。
懐中電灯何て便利なものは勿論持ち合わせて居る筈も無く、
試しにと、盲目の状態で摺り足をしながら一歩を踏み出してみる。
階段が始まり、一段下がる。二歩目でまた、一段下がる。
そうしているうちに目が慣れてきて、扉を覗いた時には見えなかったが、
奥の方に幽かな光がある事に気付いた。
最初のコメントを投稿しよう!