夕刻の必然

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……それは、初めて見るものだった。 鉄格子を嵌められた…地下に隔離された部屋。 所謂、地下牢と言うもの。 またも次の瞬間に、弦一郎は心臓が止まるほど吃驚する事となる。 地下牢の向こう側で、赤い…真っ赤な着物を着た真っ黒な髪を肩で切り揃えた少女が此方を見ていたからだ。 「…お前は、誰だ?」 震える声を押さえて、極めて冷静に問い掛ける。 赤い着物の君はゆっくりと立ち上がり、鉄格子に近付いた。 弦一郎はたじろぐ。 鉄格子越しに見る少女の背は高く、弦一郎と同じかそれ以上に思えた。 夕陽に照らされた肌は驚く程白く、瞳は、閉じられていた。 「お前こそ誰だ。何時もの庭師じゃないのか?」 少女が喋って二度たじろぐ。 その声は正しく、少年のそれであった。
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