待っています。(切

2/4
前へ
/4ページ
次へ
「学校が終わったらあの駅に迎えに来てねっ!」 私は彼女にそう言われたので、ちょうど今からその駅に向かうつもりだ。 …私達が初めて出会った、あの場所。 あの日私は会社の帰りで、疲れ切っているにもかかわらず雨に降られ、しかも傘を忘れている事に気付きわざわざ買うはめになったのだ。 …そんな私の目を、彼女は一瞬で引き付けた。 君は何故だか頬を赤く腫らして、泣きながら傘も持たずに駅を出ようとするから…私は自分の傘を差し出さずにはいられなかった。 「可愛い女の子がずぶ濡れになっちゃいけないよ。」 …今思えば、生まれて初めてあんな恥ずかしい台詞を言ったのだ。 でも後悔してはいない、それがきっかけで、付き合えたのだから。 私はそんな事を考えながらふと微笑んで、雨の降る曇り空を見上げた。 ………………でも…君がその日、駅に来る事はなかった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加