アル

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アル

シャロームが20歳となり、彼は町で出会った18歳の少女、ヴェラと結ばれる。そんな彼女との間に男の子が生まれた。その男の子はアルと名付けられた。顔立ちが整っていて、そして美しいというのが、アルに対する第一印象だった。 とりあえず元気に産声をあげて以来、あまり泣く事はない。と言っても、これは俺かシャロームかヴェラのどちらかがアルの側にいる時のみで、側に誰もいなくなるとすぐにぐずった。そして、誰かが側へ来て抱き上げると、すぐに泣きやんで笑顔になる。 「寂しがり屋なのかな・・・?」 アルを抱き上げた時に、シャロームが呟いた。 「甘えん坊なのかもね。」 ヴェラは人差し指でアルの柔らかい頬を愛撫する。最初ははしゃいでいたアルだったが、次第にウトウトし始め、そして眠った。アルの寝顔はとても可愛い。シャロームはそんなアルにウットリしながらも、しっかりアルを抱きしめていた。 そして、そんなこんなでアルを育てているうちに、いつのまにかアルは3歳になる。言葉も喋るようになり、そして側に誰もいないだけでぐずることはしなくなった。しかし、俺とヴェラとシャローム以外の人になつこうとせず、おまけの果てに人見知りの反応を見せ始めた。結局、アルからの目線で言えばパパとマ マとモロスコ以外は好きじゃない、と言うとこだろうか? そして、この時にアルが高所恐怖症になってしまうキッカケとなる事件が起こった。シャロームとヴェラが城に呼ばれた日の事だった。俺は別室でアルを見ていることになった。アルはたまたまその部屋に入って来た子と仲良くなる。しかし、その相手の子が悪ふざけをしすぎてしまい、アルを誤って突き落としてし まう。地面にたたき落とされる寸前に俺が助けたから良かったが、高いとこから外を見ようとしても嫌がるようになった。 そんなこんなで、10歳まで、アルは家族のなかで幸せに育っていった。
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