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「悪いけど・・・一ヶ月の間、アルを町か御神木様のところに連れ出しておいてくれないか?朝から夕方まででいいんだ。」
ある日の夜、10歳になったアルが眠ってしまった時に突然シャロームからこんな事を言われた。
「いいけど・・・アルがいない時でないと出来ない用事なのか?」
「ちょっと黒い鍵の事でね・・・ヴェラに手伝ってもらいながら実験したい事があるんだ。」
「だったら、泉の反対側にいさせたらいいじゃないか・・・」
「いや、それよりだったら町や御神木様のところに連れ出した方がいい。もしかしたら、今回の実験でトラウマになることがあるかもしれないんだ・・・寂しがらせてしまって悪いと思うんだけどね・・・」
トラウマ、という言葉に引っかかった。一体、どんな意味なのだろう?
「トラウマって・・・どういう事だよ?」
「もしかしたら、これを作った人が僕や僕の子孫まで怨んでいたりして・・・」
「え・・・」
「ま、僕の単なる憶測だけどね。」
「ふ~ん・・・」
憶測という言葉に安心してしまい、俺は怨みと言う言葉をすぐに忘れてしまった。しかし、トラウマと言う言葉だけは、どうしても頭から離れなかった。シャロームとヴェラが眠ってしまい、俺も寝ようとアルのすぐ傍で添い寝をしたものの、結局トラウマと言う言葉のおかげで眠ることは出来なかった。まぁ、隋天使の血を引く者は寝なくても大丈夫なんだけどな・・・
そんなこんなで次の日になる。俺はアルを起こし、そしてアルが身支度をすませるのを待ってから、今日から一ヶ月の事を説明した。
「アル・・・今日から一ヶ月は、お父さんとお母さんはお前の相手が出来なくなるくらい忙しくなる。寂しくなるが、一ヶ月の間は俺と一緒に町か御神木の所へ行こうな。」
「う・・・うん。」
「だけど、お父さんとお母さんと一緒にいられないのは、朝から夕方までだから。」
アルにとって、お父さんとお母さんと一緒にいられないのは初めてだ。悲しそうな顔でしばらくシャロームとヴェラの方を見ていたが、やがて俺に抱きつく。
「それじゃあ、アルを頼むよ。」
「ああ、任しといてくれ。」
1日目は御神木様の所へ行った。どうせ寂しいままで町に出ても楽しくないだろう。案の定、アルは御神木様の前に着いたところで泣き出してしまった。これだと、しばらく町に出るのは無理だろうな・・・
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