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突如とどろいた轟音に、私はどきりとして覚醒した。
稲妻のような、津波が叩きつけたような、何か大きなものが音をたてて落ちてきた、そんな気がした。
心臓が跳ねる中、ベッドから体を起こす。
いつしか窓の外は激しい雨になり、暗闇の中に雫の打ち付ける音が響いている。
今は何時だろうか。
嵐は去ったのか。
さっきの音は。
竜たちは行ってしまったのだろうか。
居間が人の声で騒がしい。
明かりが灯っており、扉の隙間から細く光が漏れていた。
ぼそぼそと話し声がかすかに聞こえてくる。
私は扉にそっと寄って、少しだけ開けて居間を覗いた。
祖父が夜具の毛皮のケープを纏い、険しい顔で立っていた。
そのとなりには母が同じように寝具姿で立っている。
「なんでしょう」
母が心配そうな顔で頬に手を置く。
「なにかあったな」
祖父は腕を組んで答えた。
「竜の旅に?」
「まだ嵐が治まっていないようだからな。いつもの年ならもう終わっている。まだ群れが近くにいる証拠だ」
そう言って窓に目をやる。私も思わずそちらを見た。
打ち付ける雨粒が、闇夜をさらに暗く淀ませていた。
見つめる祖父の横顔の険しさに、私は得たいの知れない不安感が湧きあがってくるのを感じた。
「フェリラ、起きちゃったのね」
扉から覗いていたのを見つけた母が、私を招き寄せた。
その時、外を見ていた祖父がはっとして言った。
「――誰か来た」
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