嵐の寄せる土地

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  窓の外を灯りが一つ、近づいてくる。 それが人の持つ灯し火だとわかるくらい大きくなり、どんどんどん、と玄関の戸を叩く音がした。 祖父が素早く歩いていき鍵を開ける。 戸が軋みながら開き、雨用のコートを頭まで被った若者が表れた。 手に持ったランタンが煌々と輝いて薄暗い家の中を照らし、入り込んできた冷たい風が、私の頬を冷やりとなでた。 「ビル爺さん、竜が落ちた! 村の外れの海岸だ」 走ってきたのだろうか、若者は荒い息を整えもせず言った。 「なんだって」 祖父の驚愕の声と共に、母が頭上で息を呑む。 私は不安に駆られ、母の足にしがみついた。 「どれくらいだ? どこに落ちた」 「一頭だ。群れからはぐれたらしい」 青年は狼狽した表情だ。全身を包んだコートから雨水がぽた、と玄関の絨毯に滴っている。 「村のみんなで空へ引き上げる。爺さんも手伝ってくれ」 「わかった」 祖父はうなずいて、少し考えるように黙った後、 「竜は子どもにしか見えん。フェリラ、一緒に来るんだ」 急に自分の名前を呼ばれ、私ははじかれたように祖父を見上げた。 「お父さん、フェリラを外へは……」 焦ったように母が祖父を見る。 娘を外に出すのが心配なのだろう。 「仕方がない。風が見られん大人だけでは何も出来ん。鹿毛のコートと、皮の雨合羽を着せろ。フード付きのだ」 祖父は眉を寄せて低い声で言った。 自分も上着を脱いでコートを取り出す。外履きのブーツを出してきて、玄関に揃えた。
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