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夏休みを目前とした7月の暑い日、季節外れとも言える転校生がやって来た。先生が黒板に白いチョークで『林堂稲子』と丁寧に書いていく。
「今日から、みんなと一緒に勉強する事になった、林堂稲子さんです」
先生がありふれた台詞を言いながら、彼女を紹介する。彼女も軽く会釈をして自己紹介をした。どうやら父親の仕事でこっちに引っ越して来たらしい。あまり穿鑿する訳も無いので机に臥せながら窓越しに雲を眺めていた。
それは、彼女が転校して来た2~3日後だった。放課後の教室に忘れ物を取りに戻ったら、数人の女子が叢がっていた。気になったので扉の陰に身を隠して彼女等の行動を覗いてみる。一人の女子はクラスのリーダー的存在の毒島名維でその周りに毒島に小判鮫の如く付き纏う、百日紅和多美と秤禰々が毒島を眺めている。毒島の前には、跪くように座っている、林堂稲子がいる。彼女等の話からすると、毒島は林堂の事が気に食わず、上級生が下級生を苛めるかの如く、口論をしていた。その気迫に負けその場を離れ、俺は帰ってしまった。
翌日、学校に行くと林堂の姿は無かった。その翌日もその復翌日も彼女の姿は無かった。毒島の方へ目を向けると、時折見せる笑みに悪意を感じてしまう。
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