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可憐からの着信があってからおよそ10分。
咲斗は自分の家の前に立っていた。
そして向かいの家の玄関口を見ている。
と、中から人が出てきた。
その人は出てきてすぐに振り返り、ドアの鍵を閉めはじめた。
その人は咲斗と同じくらいの少女で、長い髪とその赤みがかった茶色が特徴的だ。
少女は鍵を閉め終えたのか、再びこちらを向いて走り出した。
最後に、敷地と公道の境にある小さな門を閉めると、咲斗に小走りで近づいてきた。
「ごめぇん咲斗、遅くなっちゃった…。」
「……ホント、遅ぇよ。」
お向かいに住む少女――可憐へキツい一言を放ち、そっぽを向いた。
だがそれは怒って言ってるわけではない。
「……咲斗?」
そうとは知らない可憐は、さっきまでと違い少し弱気になっている。
彼女は咲斗の視界に入る位置に立ち直った。
「ねぇ…咲斗…怒ってる?」
すると咲斗はまたそっぽを向いた。
「な――お、怒ってねぇよ!」
その直前、一瞬だけ見えた咲斗の顔は赤く染まっていた。
「…ふぅん?♪」
可憐は気付いた。
気付かれた咲斗はギクリと体を強ばらせた。
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