203人が本棚に入れています
本棚に追加
少年は立ち上がった。
と、同時に森の奥からかすかに音がした気がした。
(ん?…気のせい――)
『…ゴオォォ………』
(……じゃないな。)
音がするのはさっきまで歩いていた方向のさらに奥だ。
少年は少し怖かったが、好奇心の方が勝り奥へ歩きだした。
『…グオォォォ…』
音が近づくにつれ、それは獣の唸りに似ている気がしてきた。
『…ガウウウゥゥ………』
怖ろしくなってきた。
もう進みたくない。
だが、いつの間にか足が勝手に動いている。
『ガゴオオオオォォォ……』
(やっぱ嫌だ…もう進むな!見たくない!!)
少年はギュッと目をつぶった。
するとピタッと足が止まった。
(…………ぅ)
何かの気配…。
(は、早く覚めろ!頼む!!!!)
『キタ…カ…ツイ…ニ……』
声がした。
とても低い、悪意に満ちたような声が、すぐ近くで。
そっと、目を開けてみた………。
(……ひっ!?)
そこには暗闇に浮かぶ紅く光る三つの鋭い目。
それ以外は何も見えないのがさらに恐怖をあおる。
『ヤット…ワレ…ノ…ワレノ…』
目を閉じたのだろうか、紅い光の点が見えなくなった。
が、次の瞬間、カッとその凶悪な目を見開いた!
そして暗闇から黒い巨大な腕が現れ、少年を握り上げた!
彼は怖ろしさのあまり声が出ない!
すると今度は大きな口と牙が――!!
『人ノ子ヨ…早ク…早ク――!!!』
その鋭い巨大な牙が少年めがけて――
最初のコメントを投稿しよう!