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いくら戻っても麗はおろか人だかりすら見えやしない。
「麗………どこに居るんだよ………。」
そんな言葉だけが虚しく流れ出る………。
ただただ自分が情けなくなる………。
「君、菊池裕太君だね?」
あ? 誰だよこんな大事な時に………。
「今はてめぇに付き合ってやる暇はない。」
「まぁそんなに牙をむかないでくれ、今僕は伊吹さんに頼まれて君を捜していたんだ。」
おい………それって。
「あんた麗の居場所分かんのか? 頼む教えてくれ!」
ただ無我夢中で相手に突っかかる………。
「分かっている、すぐ案内するよ。」
そう言ってスタスタ歩き始める人……あれ…この人だれ?
「ほらそこに居る。」
あぁ居た………楽しそうに金魚すくいしてる。
なんか無性に腹が立つ。
「あ……ゆぅ……ゆぅぅ………うぐっ……えぐ………うぅぅ。」
俺を見つけた麗はポイをほり投げて泣きながら俺に抱きついてくる。
怒る気なんか一瞬で消え失せた………。
麗はこんなになるまで不安になっていた……泣くのも我慢してずっとだ………。
「ごめんな麗……ちゃんと見てやってればはぐれなかったのに。」
「んーん……ゆぅは悪くない………ごめんなさい……勝手にはぐれちゃって。」
麗は首を横に振って俺の言葉を否定すると自分が悪いと言い出した。
「違うっての、麗は悪くない。 また泣かしちまったな。」
あぁ……こうなるなら抱き締めながら移動すりゃよかった。
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