暁の音色と小鳥の調べ

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 形なんかいらない。  もう持ち切れない程の思いを、返し切れない程の思いを、あなたから沢山もらったから。  でももし、ひとつだけ願うことが許されるなら。  ただ、あなたの隣りにいたい。  あなたの隣りにいることで、あなたと同じ景色を観たい。  同じ音を聴き、同じ色を見て、感情を共有したい。  あなたに降り懸かるもの全て、時には苦痛を、時には後悔を、二人で分け合いたい。  口には出さないから、どうか願うことを許して欲しい。  そう、思っていたのに。  あなたはわかっていたのだろうか。  そんなこと、お見通しだったのかな。  “隣りにいられる権利”を、あたしにくれるの?  本当にあたしでいいの?  ねえ、達平。
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