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「凌、これがあなたのお父さん」
そう言って、ある日母さんがくしゃくしゃになった写真を広げた。
そこには仲睦まじげに体を寄せ合う男女がいて、その一人は紛れも無く若かりし母の姿だった。
「この男の人が、あなたのお父さんよ。もし、もしお母さんがいなくなっても、この人がいるから大丈夫だからね」
うっすらと瞳に涙を浮かべる母は、そのやせ細った左手で俺の髪を撫でた。
そんな、9歳のある日。
それから何日も経たないうちに、母さんは死んだ。
病名なんて10歳足らずの俺に理解出来るわけもなく、そしてそれ以前に病院に行くお金も暇もなく働く母の後ろ姿を、ただただ追う夢を毎夜見るばかりだった。
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