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「今日から私が君の父さん。そして彼女が母さんだ」
そう言って、母が見せてくれた写真より僅かに老け、ふくよかになった男が言った。
その横には背の高く髪の長い女が立っていて、神経質そうに組まれた指先を動かしている。
黙ったままでいると、女は俺に蔑むまなざしをくれてから“父親”に言った。
「ねぇ、いつまで置くつもりよ。やだからね、あたし。達平だっているんだから」
まるで――いや、明らかに邪魔者扱いであることに、俺は疑問も不安も抱かなかった。
ただこの女に対する深い嫌悪感が、心も身体も埋めて尽くしていく感覚を、強く両手を握り締めることで誤魔化したのを覚えている。
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