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バサ。
九州や広島の雪とは違った感触に、夏木は、バランスを崩して雪の中に埋もれた。
「いてぇつめてぇ」
誰もいないことを良いことに一人悪態をつく。
これじゃ、格好付けるどころか悪くねぇ?
それに有坂の姿は、先ほどから見えない。インストラクターがいるのをいいことに本当に、野放しにするつもりなんだろうか。
確かに美人だったさ。北海道は美人が多いっていうし、スノボしてるのに肌白いし。
まぁ、考えても同じかと、ウエアに纏わり付いた雪を払いながら立ち上がろうとする。
すると、刹那……。
「……、組を離れるな。インストラクターの先生が探してたぞ」
伸びてきた手を見上げると、三割増しの有坂。
つーか超うまくね?
「……ずりぃ、孝」
「あん?なんかいったかくそガキ」
「な、なにが糞ガキだよ!つーか格好良くて、スノボ上手いとか、犯罪じゃん」
「何だ、年中盛ってるガキに抗議される所以はねぇ」
「それは……が……だから」
いつも同じような怒ったような口調の年上の美人の恋人は、何を考えてるかわからない。
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