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自動販売機の前、俺はネジの数本抜けたロボットのごとく、その場に立ちすくんでいた。
俺の前には、既に彼女の姿はない。あるのは、この食堂内にいる生徒たちの騒ぐ声だけだ。
手の中にあるお茶を顔の前に持ってくる。
……つーか、手が冷たい。
そりゃまぁ、『つめた~い』の商品だもの。あぁ、何故か缶コーヒーのあの温かさが愛おしい。
春も深まりかけたこの季節、ホット缶コーヒーのホットの部分の重要性に気付かされた。
あぁ、彼女とぶつかったこの背中よ、なんとなくだがありがとう。
心の中で、俺は小さくそう呟いた。
しかし、あのホット缶コーヒーのほのかな温かさは、それだけでは終わらなかったんだ。
忘れもせぬ、あの疑問。
俺がマイHRに戻り、そのあとは無事に平穏な一日を過ごして、迎えた次の日、俺は半強制的に気付かされたのさ。
彼女が持つ、ホットブラック缶コーヒーの本当の意味を。
それは、今日から明日、時は調度今から丸一日を跨ぐ。
そこまでの時間の流れを説明していこうか。
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