ホット缶コーヒーの奇跡

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聞き直そうとしても、既に遅かった。 次に俺が首を上げたときには、彼女は俺の前をそそくさと歩いており、彼女の背中が「今は話し掛けるな」と言っているような気がしてならなかった。 それどころか、無言の威圧感が俺を締め付けているような気さえする。 あぁ恐ろしや、眠り姫。 彼女の足は、車の奥の奥、ある意味駐車場最深部と言い切ってしまっても構わないような場所に進んでいるらしい。 車の停車ブロックしかないぞ、そっちは。まぁこれはある程度の予想だが。 実際見てないものを決め付けるのはよくないよな、うん。 規則正しく歩みを刻む彼女のすらりと伸びる華奢な足に見とれつつ、今度ばかりは彼女の後ろ姿を堂々と追っていけたというわけである。 一一さて、そのまま歩いたこと約数十歩。 一度車の影を曲がったかと思うと、その車を俺も曲がったその先で、彼女は立ち止まっていた。 ついでに補足。俺の目には、ここにあってはいけないセット一式も、彼女と並んで俺の目に映っていた。 「座って」 静かに、そして淡々と聞こえてくる彼女の美声。 同じく華奢な手を伸ばし、彼女が指差すその先には、食堂内にあるはずのパイン材のテーブルとそのイスが一対。 何故に……ここに? あってはならないこのテーブルとイスに戸惑いを隠せないまま、彼女のペースに乗されつつあることに、ようやく気付いてしまった。 もう一度言おう。 何故に……ここに?  
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