ホット缶コーヒーの奇跡

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プル栓の開けられたそのブラック缶コーヒー。 その缶に口をつけ、これまた音もたてずに飲む彼女の姿には、俺も絶句してしまった。 いや、絶句と言うよりも……ただ単に、見とれてしまったと言い直そう。 何と言うか、そう、絵になっていた。缶コーヒーを飲む姿が、何故か綺麗に絵になっているんだ。 「一分待ってて」 「えらい具体的だな」 缶コーヒーから一瞬だけ口を離し、俺にそう言葉を告げたあと、再びブラックコーヒーを飲む彼女。 俺はブラックはあまり好きではない、というか、好んで飲もうとは思わない質であり、この彼女の姿には、少しばかり憧れもあった。 ただこれは、あくまでも余談であり。 この思考が済むころには、体感にして早くも一分が経とうとしていた。 彼女も、缶の中身を飲み干したのか、缶をテーブルに置き、静かに目を閉じてじっとしている。 先に口を開いたのは、俺でもその他の人物でもなく、目の前でイスに腰掛ける彼女であり、それ以外はない。 彼女は、ずっと閉ざしていたその口を静かに開いた。 「……ふぅ、待たせて悪かったよ。時間をとらせてしまったことは謝ろう。すまなかった。 ……それはさておき。 何故君はそんな鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしているんだい?」 ……豆鉄砲だって? 俺の頭の中じゃ、鷹が水鉄砲を喰らったくらいのレベルのビジョンが映し出されてるさ。 こいつに、眠り姫に、いったい何があったってんだ? もう一度言う、誰か簡易的に説明してくれ。    
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