ホット缶コーヒーの奇跡

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  ……驚愕。 ただその二文字で表すことが出来る。 目の前にいるのは眠り姫だ、うん。 その瞳と口元を見る限り、どうも腹話術やそういった類いのものとは思えない。 悲しくも、俺の口はあんぐりと開けられたままで、そのときは閉じることはなかった。 「ふむ、無言か。 まぁそのような対応をしてくれれば、私としても返答がしやすい。 君の代わりに問いを当ててみせよう。 君は今、“なんでこいつがこんなにも喋っているのか”。そう聞きたいのではないかな?」 嫌み感の感じない、どこか優しいその微笑みを浮かべる彼女へ、情けないながらも俺はカクリと首を下へ傾け、ゆっくりと元へ戻した。 崩れなく整った姿勢でその椅子に座る彼女は、華奢な細腕、いや、華奢な全身には似合わず、どこか一種の逞しさのようなものをオーラに纏っている。 なんというか……そう、大人みたいな。 大人の風格、大人の威厳みたいな。 ……格が違う。 無意識的に、彼女の新たなプロフィールが俺の脳に刻み込まれた。  
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