ホット缶コーヒーの奇跡

22/34
前へ
/686ページ
次へ
  「話をするとは言ったが……まずは自己紹介からにしよう。 君は私の名前を知っているかい? あまり人と関わりを持たない分、私はそんなに名前を覚えられたことがないからね」 そういえば、俺は呼称を知っているだけで、眠り姫の本名は知らないな。クラスメートで、更には隣の席だというのに。 ダメか? セーフだろ、うん。 教室の彼女の机に、名前が貼ってあったかもしれんが、俺はいちいちそんなところまでは見てない。 あとで教室に戻ったら確認しておこう。 とりあえず無言で首を振っておく。 「そうか。私は、姓は柳、名は有姫。川柳の柳という字の“やなぎ”に、有明の有の字の“ゆう”、お姫様の姫の字の“き”、合わせて柳有姫だ。 出来ればニックネームとして“姫”と呼んで欲しいな。名前や名字で呼ばれるのは抵抗がある。少しばかりコンプレックスでね。 さて、君の名前は? 実を言えば私自身も君の名前を知らないんだ」 柳、有姫ね。 なるほど。“眠り姫”ってのは、有姫の姫の字を使ったわけか。なら、俺も姫と呼ばせてもらおう。 馴れ馴れしくはないだろ、そう呼んでくれって言ってるんだし。 彼女の名前を心の内で再確認。 次は、俺の番だな。 何故自己紹介をし合うのは分からないが……この場の空気に合わせておくことにしよう。    
/686ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3092人が本棚に入れています
本棚に追加