ホット缶コーヒーの奇跡

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  敢えて、俺の自己紹介については割愛させていただこう。 名字と名前くらいだけに留め、口喋権を彼女へ移した。 「一一なるほど、君も結構変わった名前を持っている。その様子だとニックネームがあるのではないかい? 案外こういった名前にはあだ名が付きやすいからね」 よくぞご存知で。 いや、ナイス推理、とでも思っておこう。 俺の名前を彼女に伝えた途端、こうもまぁいろいろと考えをぶつけてくるもんだ。感心の言葉も出ない。 「君のニックネーム、私が当ててみせよう」 そう言うと彼女は再び缶コーヒーを手に取り、それを口に運びつつ静かに目を閉じた。 そんな眠り姫……いや、姫の姿に実は俺は見惚れてしまっている。 何と言えばよいものか。 黙っているときの彼女は“可愛らしさ”と“幼さ”の両方を兼ね備えており、 コーヒーを飲んだあとのこの彼女は“美しさ”と“大人っぽさ”を持っている。 雰囲気だけでここまで変わるものなのか。 人間って不思議な生き物だな。改めて実感した。 いつのまにか彼女はコーヒーをテーブルへと下ろし、目をこちらに向けていた。 その艶やかな唇が開かれる。 「君のそのシンプルな性格から考えてみても……そうだな、ヨウ辺りが打倒なのではないかな?」 ……凄いな。 「正解だ。よく分かったな」  
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