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黒板より寝顔を優先的に見つめること、やや十数秒。
彼女は尚も眠り続けているらしい。それ故に俺も時間を忘れて彼女の寝顔を見呆けていられる。
何故か嬉しいこの状況。この事象。この現実。
……いや、待て。
畜生め、勝手に緩むな俺の頬。
どうして俺は嬉しいんだ。
一目惚れしたから、とかいう単純な理由ではない。
実に面白い寝顔だから、というわけでもない。
ただ、席替えで通路を挟んでの隣になった、そして授業中の暇潰しに丁度良かった、という偶然が重なっただけ。
喜ばしいことなんか何もないはずなのに。
言葉では言い表せないこの気持ち。天にいる神様よ、理由は分からんが一応感謝しておいてやる。
「くぅ……くぅ……」
隣の彼女からは、心なしか、可愛らしい寝息の音まで耳に届いてくる。
これがいびきとすりかわっていたのなら、即刻俺は担任に席替えを要求しているところだったな、うん。
見るだけならタダのはず。
変態のすることだろうが、そんなことは今は関係ない。
俺的には彼女の顔を眺めるだけで充分だ。昼の白飯二杯半はイケる。
よし、見続けようかね。
しかし、こんな不変的な時間の流れの中、このゆったりと流れゆく時間に、なんとなく抵抗のようなものが発生した一一ような気がした。
……とりあえず、なんとなく、俺の見ている先から、何かの気配やら視線やらを感じてしまっているんだ。
そう、ただなんとなく。
俺は半機械的な動きで……再度彼女の顔の方へと首を向けた。
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