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彼女の無垢な輝きの瞳が、こちらを向いていた。
ほぼ必然的に彼女と目が合う。
無言、沈黙。
何と言い表せばいいんだ、この空気を。
彼女が言葉を発しないからこそ、俺は思う。
正直に言おう。
気まずい、と。
「何?」
頬を机に貼り付けたまま、彼女は言った。
もちろん、俺に向けてなんだろう。
……いい言葉が見つからないんだよ、こういうときに限って。
「いや、別になんでもない」
咄嗟に口から飛び出してきた言葉が、これだった。
なんとまぁ、極一般的な言い訳を。我ながら軽く落胆してもいいところか。
「見るな。寝にくい」
二言目に彼女が呟いた言葉はこれであり、この言葉を言ったあとは彼女も再び目を閉じてしまった。
言葉とは裏腹に、あまり気にしてはいない様子。
「す、すまん」
またも咄嗟に出てきた謝罪の言葉。
ここで、簡素な会話はこれまた呆気なく流れ去るように終了してしまった。
後々考えてみれば、これが彼女との最初の会話だったのかも知れないな。
会話はさておき、彼女との出会いは意外にも、この高校の入学式に遡る。
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