プロローグ

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  さぁ、続きを話すぞ。 この入学式当日から、彼女が眠り姫だということは、ほぼ俺らの学年には知れ渡っていた。 初々しさを隠すことの出来ない新高校一年生になった俺等一同は、保護者様方、教師方が見守る(正確には見張るだな)中、彼女だけが唯一、パイプ椅子に背と体重を預け、夢の世界へと旅立っていたらしい。 横12列縦5列に渡り並ぶパイプ椅子、その中のやや真ん中よりにいた眠り姫の後ろに座っていた、俺の女友人が言うのだから間違いはないはずである。 その女友人、彼女いわく、 「式の10分の8は眠っていたわね」 だそうだ。 もう、たまったもんじゃない。 式中の規律号令のときは調子良く起きて周りに見習い、その他何もしないときはすやすやと脳を休めていた、と。 常人が聞けば、大層大問題なところだな、うん。 とにかく、そんなわけで、知ってか知らぬか、初日にして、眠り姫は一躍注目の的になったというわけだ。 まぁ、過去を振り返るとすれば、だいたいはこんなもんか。 後はちょいちょい話していくことにしよう。    
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