プロローグ

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  ……というわけで、今もなお、彼女はこのHR、いや、この学年に溶け込めぬまま、今日までを過ごしているのである。 ところで、今日というのは、入学式から約二週間後の日であって、中学の頃は憧れだった“古典”と呼ばれる現代に生きる俺たちにとっては意味不明な授業や、“リーディング”“ライティング”と言った、日本に生きる人間にとっては特に意味もないような英語の授業開きなども、それはもう過去の話となった。 もともと、“可もなく不可もなく”のような成績だった俺は、高校に入っても変わらず“可もなく不可もなく”な授業の理解度なわけで、それはそれでまぁまぁな余裕があったりなかったりした。 そんなわけで、俺はいつのまにか隣を向いてしまっているのである。 窓際より一つ廊下側の一番後ろの席。教師からの注意もあまり受けぬまま、それはそれで自由に過ごせたわけだ。 まぁ、つまり、そんな好条件のおかげで、「見るな。寝にくい」という彼女の声を聞くことが出来たわけであり、一応これは、もしかしたらいるかもしれない神様という存在に素直に感謝しておくべきかもな。 神様、ありがとうさん、とでも言っておこうか。 窓の外、広々とした青空を眺めながら、俺は心の中でそう呟いた。  
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