透明人間

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やばい。私、今きっと素の顔してる… 咄嗟に彼と同じく苦笑いした私は‘外用の顔’に戻した。 「いや、気を悪くしたとかじゃなくて…何で雪なのかなって…」 私の気を悪くしたとかじゃない、と言う言葉を真正面から受け止めたらしい彼がふっと微笑む。 「俺、雪ってすっごい好き。一つ一つは儚いんだけど、時には猛威を奮って家ブッ潰してみたりさ。外から見るだけじゃ解らない内を秘めてたり、物凄く魅力的だよね!」 彼はそう言ってにっこり微笑んだ。 結局言いたい事の深い所は解らなかったけど、最後のフレーズが、普段会社では見せない笑顔が… 私に妙な重さとスピードで突き刺さるのを感じた。 それが何なのか私には解らなくて。 むず痒くなった私は右手で拳を作り、左胸をこっそり擦る。 私の中の何かが、警笛を鳴らすんだ。気付いちゃいけない。 ―きっと後悔する。 何にか解らない。 ―今の内に消してしまえ。 何をか解らない。 ―これ以上関わるな。 何とか解らない。 ――やっぱり私、この人の事が苦手だ。
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