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今時古臭い親指を立てる仕種をした後、彼は自分の席にスタスタと戻って行った。
っていうか書類と珈琲で両手塞がってなかったっけ?
私の素朴な疑問が、書類を脇に挟んでいたと言う事実に辿り着いた頃、背後から声が掛かる。
「で、そこに突っ立たれると邪魔なんだけど」
声の主はやっぱり朝から不機嫌で、ぼんやりと入口で碓氷さんを追っていたらしい私は、慌てて飛びのく。
「う、上松さんっ!お早うございます!」
ジロリと横目で睨みつけた後、彼女もまた、自分の席へと帰って行った。
「全く…」
彼女が横を通り過ぎる時に呟いた小言の続きを浴びる前に急いで席に座る。
俯いた顔を上げると、二台のパソコンを挟んだ向こう側からこっそりこっちを覗いて悪戯っ子の様に微笑む彼とバッチリ目が合った。
それに対して私が引き攣った笑みを返すと、デスクのすぐ上に携帯を浮かせて見せる。
…めんどくさい。
内心では毒を吐きつつ、私も同じ様に鞄から出して見せると、彼は満足そうに頷いた。
これってもしかして当分続く訳?
そう思うと溜息が出そうになって…飲み込む。
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