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未だにニコニコ笑い続ける碓氷さんが、口を開きかけた時だった―
…あ。
クルクルと丸められた資料がガツンと彼の頭に衝撃を与える。
「…いってぇ!」
数枚の束とは言え、ポコッと音を鳴らしながら資料が当たった場所を涙目で摩る。
「サボッてねぇで、仕事しろっ!仕事っ!」
涙目になりながら見上げる彼の視線の先に居るのは、恐らく彼と同期入社で親友でもある三國晃(みくにあきら)。
三國さんは呆れるを通り越した、諦めにも似た表情を浮かべていた。
「へーへー。働きゃいいんでしょ、働きゃ。馬車馬の様に働かせて頂きますよっ!」
25歳とは思えない、頬をプクッと膨らせてみせると渋々パソコンに向かう彼。
そんな彼に周りはクスクスと笑う。
碓氷さんは常に人の中心に居て、ムードメーカーになっている。
太陽の様な存在である彼が笑えば、その場の空気が一瞬で温かくなる。
私には決して持ち得ない才能だ。
他人と着かず離れずの距離を常に持ちたい自分にとっては、必要のない才能だとも言える。
その点三國さんとは、彼と真逆で冷静沈着。
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