透明人間

16/84
前へ
/493ページ
次へ
私の居心地の悪さといったら半端ない。 碓氷さんに憧れてる女子社員が多い事は周知の事実で、その噂話には妬みや、私に対する蔑みなんかもたっぷり含まれているからタチが悪い。 ランチのお誘いが来る様になってはや一ヶ月。 何かにつけて理由をつけては断っているものの、諦めを知らない彼の誘いは止む事がなくて。 こうして今日も私は窮地に立たされる。 解ってるんだ。誘いを断ったからって私への妬みや蔑みが消えない事。 消える所か苛立ちを増し、一段と増幅する事。 「冴えない女が調子こいてんじゃねぇよ」 今にも聞こえてきそうな声に耳を塞ぎたくなる。 それはジワジワと私を追い詰めていて、黒い塊となって覆いかぶさるのを今か今かと待っている。 毎日の様に来ていた合コンへの半強制参加の誘いが、嘘みたいにパタリと止んだ事じゃない。 話し掛けても、まるで存在しないかの様に無視される。 私の存在が無いものにされる。 これならまだ何か嫌がらせされる方がマシだ。 それは私が存在していて、意識の中に居るからこそ起こる。 でも社会では― この社内ではそれさえ許されなかった。
/493ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1014人が本棚に入れています
本棚に追加