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「ねぇ…」
俯き、安っぽいホテルにお似合いの染みのついた絨毯を睨みながら唇を薄く開く。
「ん?」
貴方はそんな私を気にするそぶりなく、Yシャツの手首のボタンを留めながらいつになく上機嫌で。
返事をした割に真剣に聞く気は薄いのか鼻歌を口ずさむ。
「……………」
それでも無言になった私を不思議に思ったのか、ネクタイを締めながらハミングに問い掛けをのせる。
「何?」
着実に終わりがすぐそこまで来てるこの時間。そんな時、呑気に歌う貴方に答えはもう出てたのに…
―どうしても聞かずにはいられなかったの。
一番、聞いてはいけない事だったのに。
―もう、限界だったの。
私の心は悲鳴をあげ続け、今にもちぎれそうで。
―いっそ、自分達以外の人間がこの世から消えていなくなればいい。
何度も願った。
誰も居なくても、何もかも取り上げられても、貴方さえいれば良かった。
私をこんな風に変えたのは貴方で。
でも貴方は一緒に変わってくれなかった。
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