透明人間

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手元にあるのは、身動き出来ない自分だけ。 こんなものあったって何の役にも立ちやしない。 私が透明人間となって二ヶ月が過ぎようとしていた。 この二ヶ月で変わった事は、碓氷さんの誘いを断る事が減った。 もう断る理由が無くなったから。 相変わらず居心地は悪いが、人間とは不思議なモノで、段々と無視される事にも慣れて来る。 悪口を聞くと自分じゃないかなんてビクつく時もある。 まだ話題に上るなんて思ってると思うと、何だか笑えるけど。 未だに何だか深い所では掴めない碓氷さんはやっぱり苦手意識が残ってるけど、今の私に手を差し延べてくれるのは彼だけだから… ただ構ってくれる相手に懐いてるだけだと言われたらそれまで。 でも…少しずつ碓氷さんに対する見方は変わって来た。 それと… あともう一つ。変化が訪れる。 4月。 新入社員が入社してくる季節。 仕事はそれなりに真面目にやって来たと自負があるが、そのせいなのか何なのか、私が教育係として任命された。 不景気に煽られ、今年企画課の新入社員は二人。
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