透明人間

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二人ぐらいなら何とかなるかと考えていた矢先の出来事―。 課長に会議室へと呼ばれて、私は昼休み足を運ぶ。 コンコン。 「どうぞ」 ノックをした後、相手の返事を待ち、入室する。 「失礼します」 ドアを開けて入ると、そこにはいつもと変わらない仏頂面のまま椅子に座る課長が目に入る。 仏頂面でも最近の課長は何だか吹っ切れた様で、やつ当たりの様な仕打ちは受け無くなった。 それでも何だかこの人を目の前にすると、顔が引き攣るのが自分で解る。 「課長、お話と言うのは?」 椅子に座りなさい、と目で合図され、大人しく座ったものの、中々始まらない話に焦れる。 「うーん、もうちょっと待って。まだ揃ってないの」 こちらを見ようともせず、手に持った書類を睨んだまま答える課長に、何も言えなくなった時― コンコン。 「はい」 「…失礼します」 碓氷さんとは違い、良く通るハスキーボイスが耳に届く。 175cmの画体がいい主は入って来たドアを後ろ手で閉じ、颯爽と歩いて私の横に立った。 「座って」 課長に促され、スッと隣の椅子に腰掛ける。
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