透明人間

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「…三國さんも呼ばれてたんですか?」 「あぁ」 私とは奇妙な組み合わせに、思わず目をパチパチさせた。 「揃ったから話、始めましょうか」 課長の声に今まで三國さんへと向けられていた視線は戻される。 「こないだ松嶋さんには新人の教育係の話したわよね?」 「はい」 先は読めないものの、私が頷くのを確認してから課長は続ける。 「その件なんだけど、三國君にもお願いしようと思ってね。ほら、今はそんなに忙しくないし、松嶋さんもその方が心強いでしょ?」 …まぁそりゃそうだけど、二人相手に二人もいる!? 第一、碓氷さんが断トツの成績を残してるとは言え、三國さんも二番手なのに。 今がまだ暇な時期だからって他にも一杯居るのに。 何だか納得いかない私をよそに、三國さんは意外にもアッサリと頷いた。 「解りました」 えぇ!?いくら課長の頼みって言ったって、ここは断ってもいいと思うんだけど! 立ち上がって、失礼しました、とスタスタと去って行く背中を私も課長に一礼し、慌てて追い掛ける。 「…三國さんっ!」
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