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廊下に響いた声が予想外に大きくて、驚いた私はキョロキョロと辺りを見回したけど、三國さんは全く気にならない様子でゆっくりと振り返った。
「何?」
私と違って、無表情を隠そうともしない三國さんに、一瞬たじろぐ。
「…あっ…と、その…いいんですか…?」
遠慮がちに、上目遣いで尋ねると顔色一つ変えない三國さんから疑問で返って来る。
「何が?」
「だって…三國さん成績も良くて仕事出来るのに、いくら暇だからって新人の教育係だなんて…断ってもいいんじゃないでしょうか…?私なら…一人でも平気ですし」
真っ直ぐに自分へと向けられる視線に慣れてない私は、つっかえながらも言葉を並べ立てた。
「………………」
あぁ、その視線が痛い…
何を生意気なって思われてる?
無言じゃなくて何とか言って…!
まともに話した事のない三國さんを引き止めた事を、心底後悔し始めた時だった。
「…別に。課長の言う通り、今の時期そんなに忙しくないし。‘アイツ’が居るから平気でしょ。それに新人教育だって立派な仕事だ。任されたからにはあんたも誇りを持て。なんせあの課長推薦だからな」
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