透明人間

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「じゃあ早速だけど箕輪、これ10部ずつコピーとって。それから中塚、あんたは皆のお茶入れて」 「「はいっ」」 テキパキと指示を出し、三國さんは一旦自分のデスクへと向かって行く。 コピーは傍で付いてなくても出来るか、お茶は給湯室の場所とかわかんないよね。 私も入社したばっかの時は毎日お茶や珈琲いれたなぁ。 なんて昔を思い出す。 箕輪君は中々元気があってまだ学生ならではのやんちゃさが残る。 中塚さんは小さくて女の子って感じで、少し怒られただけで泣き出すタイプかも。こういう子って男ウケはいいんだけど、女には敵作るんだよね… 「…ちっ、女はお茶くみかよ」 …え? 未だ俯いたままだった中塚さんがポツリと呟いた言葉は、バッチリ私の耳に届いた。 唖然と見つめる私に気付いても、聞こえてないと思ったのか、困った様な表情を浮かべる。 「お茶いれるんですよね。あの…給湯室の場所教えて頂けますか?」 上目遣いに見上げるその顔から、さっきの毒の言葉はかけらさえ見えなくて。 無理矢理さっきのは何かの勘違いなんだと思う事にする。 「…あ、あ。給湯室ね。こっちだよ」
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