透明人間

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「あーやーチャンっ♪今日はイタリアンにしない?それともフレンチがいいかな?」 「じゃあ今日はイタ…」 私のデスクに片腕をついて浅く腰掛ける様にし、ニコニコと顔を覗き込んで来る碓氷さんに答え様とした時、 「はーい!私達フレンチがいいですっ」 語尾にハートマークが付きそうな、鼻につく声が飛び込んで来る。 またか… 碓氷さんも諦めを知らないけど、ここの女子は更に諦めを知るつもりもないらしい。 はぁ、と小さく溜息をつく。 私最近溜息の数増えたな。 飛んで来た声に振り返る事なく俯いた私は、書きかけの書類を机に置いたまま、デスクに手を乗せた。 「御免ね」 お決まりのフレーズが碓氷さんの整った唇から放たれた瞬間― 周りからは見えない角度に置かれた私の手の上に、碓氷さんの大きな手が重なる。 …な、に…? 「俺はあやチャンと二人のランチを毎日楽しみにしてるから」 …え? いつもの様子と言葉の違いに、固まるしかない私の手は重ねたまま優しく包み込む様にギュッと握られた。 …ドキ。 …何これ。私、おかしい。 碓氷さんも何か変だよ。
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