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「………あははっ。ほんっと…もう、碓氷さん目茶苦茶だよ…!びっくりって、私が一番びっくりだって!」
久し振りに本気で走った達成感からなのか、それによって何かから解放されたからなのか、私も笑った。
走るのはおろか、心の底から笑ったのさえ久し振り過ぎて、いびつな笑顔になってるんじゃないかと思う。
そんな私を優しい微笑みで眺めていた碓氷さんは
「…あやチャン」
微笑んだまま―
私を抱きしめた。
「!?」
突然の出来事に私の表情からはすっかり笑顔が消え、目を見開く。
「うっ…碓氷さん…?」
「………………」
被さる様に抱きしめられた私は身動きが取れず、引きはがす事も出来ない。
今頃碓氷ファンがどんな顔してるとか、昼からの仕事が針の筵(むしろ)状態の中でするんだろうなとか、考える事は沢山あるハズなのに全てが一瞬で飛んでいった。
目的地をボタンで指定されず、動き出せないエレベーター同様、碓氷さんの私を抱く力も一向に弱まらないから私も動けない。
「あ…の…」
「………………」
「くる…し…」
弱まる所かギュウっときつくなった抱擁に、思わず言葉が漏れる。
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