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急に真剣な顔付きになったかと思うとコロッと表情を変え、楽しそうに、でもさっきまで見ようとしなかった私を真っ直ぐ見つめてそう言う碓氷さんに私はただ口をパクパクさせる事しか出来なかった。
…からかわれてる?
…それとも…
もう当然の様に深意を探りきれず、グルグルと周り続ける疑問。
そんな私とは正反対で満足げな碓氷さんは、運ばれて来たばかりのパスタをクルクルと器用にフォークへ巻き付け口に運ぶ。
―この時食べたパスタの味は、今でも解らない。
昼休みを終え、自分のデスクに座るとはぁと溜め息が出た。
どうやら無事透明では無くなったらしい私は、今までと違い周囲の注目の的へと変わっていた。
存在さえ無くされていたここ数ヶ月から突然の変貌を遂げた私は、痛い程の視線をそんなに気にならなかった。
ううん、気にならないんじゃない。
気にしてられないんだ。
私の全ては最早碓氷さんによって完全に染められていた。
一人で必死に考えたところで、答えなんて出て来る訳がないんだけど。
考えるなって言う方が不可能だ。
私だってこの歳になるまでに恋愛経験が皆無だった訳じゃない。
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