透明人間

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買って来たプリンとコーヒーを飲みながら、いつもと違う気持ちで前を通り過ぎて行くカップル達を無意識の内に目で追ってる時だった。 ギターとスケボーの滑る音以外、小さな話し声や笑い声しか聞こえない静かな場所に場違いな大きな音が近付いて来る。 それにふと目をやると、一人の男に群がる様に列をなす、女の子達の集団が歩いて来た。 「もおイオリまぢ最高っ☆」 「ほんっとイオリがブース入るとアガるよね♪」 「格好良すぎて超惚れるー!!」 何処かで見た事ある様な黄色い声とは比較にならない程大きな声は段々と近付いて来る。 静かなこの場所が好きな私にとってはそれが耳障り以外の何でもなくて、睨みつける様にして集団が通りすぎるのを見送る。 煩いんだけど!第一『超惚れる』なんて日本語ないしっ! 折角のいい気分をぶち壊され苛々しながら悪態をつく。 はぁ、何か疲れた。 私が帰ろうとゴミを再び袋に入れると、突然俯いた視界の中に街頭で照らされた影が映る。 「…………?」 恐る恐るゆっくりと視線を上げると、金に近い長めの柔らかな髪の下に少年の様な笑顔を浮かべる細身の男の姿が目に入った。
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