透明人間

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「松嶋さ~ん!ちょっといい?」 デスクに向かう私のすぐ後ろに立つ、腕を組み、30後半の長い黒髪をだんごに纏めた女。 目の前にあるパソコンに映るその姿にバレない様、今度はなんだよ、と小さく舌打ちする。 「この書類、32P5行目のこれ!この数字!おかしいわよね?0が一つ多いの!解る!?それとも私が間違ってるのかしら!?」 大袈裟に大きく息を吐き捨て、書類を指差す姿に 「私の担当は15Pから30Pで、そこは貴方、課長の担当ですよね?第一、0より初めの5と言う数字も3ですけど」 なんて言うだけ余計な時間を費やすだけだと解ってる私は、 「…すみません。これからは気をつけます」 そう言って提出する前にまた訂正しなきゃと溜息をはく。 私、松嶋あやは去年そこそこ名の通った大学を出てこの会社に入社。 一年も居れば、人間関係や真の上下関係。上司の性格までも把握する訳で。 今の課長こと、上松さんは私の所属する企画課の課長。 本来の彼女はバリバリの仕事人間で、それが上に認められ、四ヶ月程前から課長の席に座るようになった。
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