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約束の9時調度に現れた碓氷さんに俯いたままだった私は、肩を叩かれてビクッと震えた。
「御免っ!待った?」
顔を上げた自分と碓氷さんの距離が必要以上に近くて、そのまま俯く羽目になった私の心臓は壊れそうな程、ドキドキと音をたてる。
「碓氷さんっ…そのっ…!近いっ…!」
私の背に合わせて屈む様に顔を覗く碓氷さんの胸をそっと押し返すと、
「あぁ、御免。だってあやチャン俯いてるからさ。外で会うの初めてだし、俺の為にお洒落して来てくれたんでしょ♪じっくり見させて貰わないと勿体ないオバケが出るよ」
「…ぷっ。オバケって。それに碓氷さん急だからお洒落って言ったって…」
クスリと笑ってゆっくりと顔を上げると、彼はとても真剣な眼差しを向けていた。
「……うん、凄く可愛いよ」
そう言って優しく微笑む彼に私はみるみる顔を染めた。
「……碓氷さんこそ、普段はカジュアルなんですね」
「変かな?」
「いえ…憎たらしいぐらい似合ってます」
くすぐったいやり取りにむず痒くなった私はそう言うと足早に歩き出す。
「…あやチャン!?憎たらしいって何!?俺、憎いの!?」
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