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マイクが割れる程のその音に嫌悪感を抱き、耳から携帯を離した瞬間、さっきまでの雑音が突然途絶えた。
慌てて耳に電話を押し当てる。
「もしもし!?美園チャン!?」
私の声に一拍置いて答えた声は美園チャンのモノではなく、すんなりと耳に届く透き通った男の声だった。
「…もしもし」
聞き覚えのないその声に喉が詰まる。
「………………」
何も答えない私に暫く沈黙が流れた後、痺れをきらした様に男が話し出した。
「…ええと、誰だか知らないけど、取り敢えずあの子引き取りに来てくんない?酔い潰れちゃって正直迷惑なんだよね。あんたからも言ってやってよ。何回通って来ても俺、相手する気ないから無駄だって。
…ったくなんで俺がこんな事までしなきゃなんないんだよ。とにかく今すぐ迎えに来て。クラブKってとこ。西駅出たとこから看板出てるから。じゃ」
ブツッ。
綺麗な声の持ち主だとは思えない程、冷たい言葉を淡々と話し、電話は突然途切れた。
「…ちょっ…!」
呆気にとられていた私がやっと発した時にはもう切れていて、ツーツーと終話の機械音しか聞こえて来ない。
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