‘彼’と‘アイツ’と‘彼女’

3/37
1014人が本棚に入れています
本棚に追加
/493ページ
マイクが割れる程のその音に嫌悪感を抱き、耳から携帯を離した瞬間、さっきまでの雑音が突然途絶えた。 慌てて耳に電話を押し当てる。 「もしもし!?美園チャン!?」 私の声に一拍置いて答えた声は美園チャンのモノではなく、すんなりと耳に届く透き通った男の声だった。 「…もしもし」 聞き覚えのないその声に喉が詰まる。 「………………」 何も答えない私に暫く沈黙が流れた後、痺れをきらした様に男が話し出した。 「…ええと、誰だか知らないけど、取り敢えずあの子引き取りに来てくんない?酔い潰れちゃって正直迷惑なんだよね。あんたからも言ってやってよ。何回通って来ても俺、相手する気ないから無駄だって。 …ったくなんで俺がこんな事までしなきゃなんないんだよ。とにかく今すぐ迎えに来て。クラブKってとこ。西駅出たとこから看板出てるから。じゃ」 ブツッ。 綺麗な声の持ち主だとは思えない程、冷たい言葉を淡々と話し、電話は突然途切れた。 「…ちょっ…!」 呆気にとられていた私がやっと発した時にはもう切れていて、ツーツーと終話の機械音しか聞こえて来ない。
/493ページ

最初のコメントを投稿しよう!