愛しい君の名を

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『彼は国の為によく戦ってくれた。 最後の最後まで一生懸命やってくれたよ。 とても 素晴らしい死に方だった』 さっき、言われた言葉を 思い出す。 素晴らしい死に方ってなんだ。 死ぬことが良い事なんて あるワケない。 名誉の戦死? 国の為に死ぬ事が名誉なことだって? ふざけるな。 死んでしまったら、もう終わり。 なにもかも消えてしまう。 “殺しあい”に行く前、 君は笑顔でこう言った。 『行ってきます、アーサーさん。 必ず帰ってきますから… それまで 待っててくださいね?』 君は確かにそう言ったんだ。 帰ってくる と。 でも、実際 帰ってきたのは“体”だけ。 “君”は何処かに行ってしまった。 あぁ、憎い。 俺から君を奪った世界が、 たまらなく憎い。 でも、1番憎いのは 君を守れなかった 無力な自分。   ごめんなさい。   ごめんなさい。 何度悔やんでも 悔やみきれない。 意味がない。 君はもう 戻ってこないのだから。 .
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