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「暑ー……」
溶けそうな足取りで通学路を歩く。いや、実際スニーカーは溶けてるのかも!というテンションだ。
街にもいささか元気が無いように感じた。歩く人もまばらだし。…まぁもしかしたら自分が扉の前で(非常に)バカなことをしていて時間が遅れたせいもあるかもしれないが。
と、前から一枚の紙が風に煽られて春一のちょうどお腹のあたりに当たる。
「なんだぁ?」
紙を見てみると、そこには『地下鉄グリンバルの開通延期の断り』とかかれており、詳細も明記してあった。
確か地下鉄グリンバルは、少し前に電磁獣が線路やらを破壊したために建設がおくれた、その名の通り地下鉄だ。
だが、特長的なのはその広さ。
それが破壊されたのだから、業者にしてみればたまったもんじゃ無いだろう。
照りつける太陽を軽く睨み、秋月春一は門を曲がる。
(うーあー…暑いよ暑いよ。暑いっていうと更に暑くなる気がしてならないけど暑いっていいたい。)
などと、どうしようも無いことを考えていると、体が『何か』にぶつかった。
「きゃっ」
「ん?っと」
ぶつかった『何か』は小さな悲鳴を漏らすと、その場で尻餅をつく。
よく見ると、高校生くらいの少女だった。
「悪い、大丈夫か?」
手を差し伸べると相手は手をとった。
「ああ、こっちこそすまない。ぼーっとしていたんだ」
相手の女の子はそういうと長い髪を邪魔そうに払った。
(あれ?)
春一はあることに気づいた。制服が見慣れた物だったのだ。
「その制服…」
「え…あ。一緒の学園?ってその腕章は先輩じゃないか。つい、タメ口で」
どうやら相手は一年生らしい。でもはっきりいって自分と比べると大人に見えるのは何事でしょう?
「いや…ま、いいんじゃね」
「いや、そういうわけには……しかし、」
と言うかその言葉遣いがすでにタメ口なんだけどなぁと思いつつ、春一は頭をかく。
「楽な方法でいいって。あんま気にしないし」
と言うと少女は少し考えて
「……そうか…すまない」
と、小さく微笑んだ。
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