Welcker tells nothing

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 男は一息ついて、それからまた語り出す。その表情はとても悲しそうだった。その表情を見た俺は、始めて気付いた。おそらく彼もヴェルカ隊長の知り合いなのだと。そして彼もまた、俺と同じ悲しみを感じているのだと。 「インテリオルとオーメルの部隊は排除されたが、厄介な置き土産を残していった。彼等の任務は時限信管式の爆弾をアンカー部に投下する事だった。誰も気付かなかったらしい。アンカーとはいえ、ただの小惑星を括り付けただけという簡素なものだ。補強してあるとはいえ、些細な衝撃で側面が剥離し、軌道エレベータ本体に直撃する事もある。現に奴らはそうした。そして、数百の時限爆弾が未処理のまま起爆した。案の定アンカー側面は剥離。しかし、大半は地表に向かい大気圏で消滅したよ。だが、巨大な破片が一つ、軌道エレベータに向かった。報告によれば、計算上この破片が直撃すれば軌道エレベータを揺さ振り、地表に大きな損害が出る程の威力があったそうだ。それを関知した彼はその破壊を試みた。しかし、破壊は出来なかった……時間が足りなかった。そして彼はその身を挺し、その破片から軌道エレベータを護った。その姿を作業員が目撃していたよ。彼は作業員が近くにいた為、ネクストのPA(プライマルアーマー)の展開をしていなかったんだ。それが仇となったかは定かでは無い。しかし破片の直撃を受けた彼のネクストは、大破どころ騒ぎでは無かったという。原型を留めていなかったそうだ。特にコア周辺は消し飛んだらしく、遺体も見付かっていない……との事だ」
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