Bark Fenrir

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 その日、いつもなら活気づいているはずのガレージは静まり返っていた。ガレージのハンガーには、一機のACネクストが完全な状態で組み上がっている。他には何も無かった。同じ部隊に所属していたレイヴン達のノーマルも消えている。此処には俺以外の人間はいない。  俺が養成施設から帰って来た日、仲間のレイヴンやメカニック達は温かく出迎えてくれた。おめでとうサシャ、とみんな祝ってくれた。俺のリンクス認定祝いと称した賑やかな宴会も開いてくれた。  だが、誰一人としてヴェルカ隊長の事は口に出さなかった。口には出さなかったが、隊長の死はみんな知っているようだ。だから俺も、それには触れなかった。  いつしか宴会もお開きになり、一人、二人と自宅へと帰っていき、とりわけ仲の良い者同士は残って個人的に飲み交わしていた。  俺も、同時期に入隊したレイヴン、ジョナサン・マクレイガーと飲んでいた。  他愛ない話だったが、久し振りの仲間との会話は新鮮だった。 「しっかしよぉ、お前がリンクスとはなぁ……世も末だよなぁ?サシャ」 「うるせぇよ、ヨナ。戦場に出たら守ってやっから心配すんな」 「へへッ、粗製が言ってらぁ!」  ほろ酔いのヨナは笑いながら俺の肩をバンバン叩いた。 「しっかし、良いよなぁ。ネクストに乗れんのは羨ましぃぜ」 「ならお前もAMS適性の試験受けてみろよ。まだ受けてないんだろ?案外イケるかもしれねぇぜ?」 「ああ……そうだよな……これからの時代、レイヴンじゃな……」  ヨナは急に笑顔を潜め俯いた。
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