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「おいおい、急にどうしたんだよ、らしくねぇぜヨナ」
「養成施設にいたお前は……知らねぇだろうけどな……」
「ヴェルカ隊長の事、だろ?……施設で、聞いたよ」
「そうか……最後まで、カッコイイ……人だったよな。隊長は」
目に涙を溜めながらヨナは言った。
「ああ……最高の人だった」
俺も目頭が熱くなる。それからヨナと俺は涙を紛らわす為に二、三度無言で飲み交わした。しかし酔いは醒める一方だ。酒を交わすたび、現実が引き寄せられる。
「サシャ……みんなな、お前に感謝してるんだせ……」
囁くようにヨナが言った。正面を見詰めるその目に涙は無かった。
「……お前のお陰で、みんな悲しみを紛らわせる事が出来たんだ……それに……」
その後の言葉をヨナは言わなかった。
俺には彼が何を言いたいのかが解った。解ったが、しかし……
「俺には……荷が重過ぎる」
酒を煽りながら俺は思った。俺に部隊を率いる能力など無い。
「……解ってる。解ってるさ……だが、これで栄光のヴェルカ小隊も解散かぁ」
そう言ってヨナは、グラスに入ったウイスキーを一気に飲み干した。そして空になったグラスを持ち上げながら、そのグラス越しにこちらを覗きこんだ。
「だが、気に病むなよサシャ。どうにもならん事もある。それに此処の隊員たちは一流の塊だからな。既に複数の企業からオファーが来てる。ヤツら俺達の思いなんてお構いなしさ」
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