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俺がぼうっと寝転がっていると、ハンガーの正面開口扉の方から、コンコンという鉄を叩くような音が聞こえたので、俺は仰向けのまま頭を仰け反ってそちらを確認した。逆光で解り辛かったが、男のようだ。
「貴方が……サシャ・サンドリオンですか?」
そう言って男はガレージの中に入って来た。建物に入り光が抑制され、男の輪郭があらわになる。その出で立ちは異様で、白いスーツに金髪のおカッパ頭、そして一昔流行ったような縁の大きな、ダサい――何とも言えないサングラスをかけている。
「そうだが……どちらさんで?」
俺は仰向けに仰け反ったまま返答する。知らない男だったが、向こうは俺を知っているようだ。
「ああ、申し訳ありません。申し遅れました。私(わたくし)、カラードから派遣された貴方の専属オペレータのパラベラムと申します……まぁコードネームですが。以後お見知りおきを」
そう言ってパラベラムと名乗った男は優雅にお辞儀をして見せる。
「なッ……何だと? あ、あんたが……オ、オペレータ……だって?」
正直な話、俺はショックだった。オペレータ=美人女性と勝手に思い込んでいた俺は、まさか男のオペレータが来るとは毛頭考えてはいなかったからだ。
「……そうガッカリしないでくださいよ。まぁ……お気持ちは解らなくもありませんが」
俺のあからさまな落胆ぶりをみて、パラベラムは溜息混じりに肩を落とした。
「腕は保証しますから、その点はご心配無く」
そう言ってニコリと笑ったパラペラムの口元から、純白の歯が見えた。それが俺には少し腹立たしく思えて仕方が無い。
「当たり前だ馬鹿野郎……これで腕が悪かったらぶっ飛ばしてるところだ」
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