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「成る程、テストね」
俺は鼻を鳴らしながら頷いた。依頼だが、同時に試験も兼ねる、か。企業連も、なかなかうまい具合に事を運ぶな。
「早速詳細を聞こう。ブリーフィングルームは……」
「待て待て、そう焦りなさんな。まだカラードに登録を済ませていないだろ?」
「……?書類で済ませたはずだが?」
確かに済ませたはずだった。養成施設で三枚の書類にしっかりサインしたはずだ。カラード登録証明、ACネクスト保有証明、オペレータ依頼証明。現にネクストも専属オペレータも此処に来ている。よってカラード登録もなされている。俺は訝しんだ。
「君のリンクス名の登録さ。手続は俺が済ますぜ。ま、本名で出るなら必要は無いがな。どうする、灰被りのサシャ(サシャ・サンドリオン)?」
そういう事か。俺は納得した。勿論本名で出るつもりは無かった。それに、リンクス名なら昨日のうちに考えておいたのだから。
「ハティ・スコル。今日から俺は、ハティ・スコルだ」
月(マーニ)を喰らう狼ハティ。太陽(ソール)を飲み込む狼スコル。何れもフェンリルの息子達。それぞれ古ノルド語で『憎むもの』『嘲るもの』を意味する言葉でもある。憎み嘲る者。この名は、俺のリンクスに対する当て付けでもあった。レイヴン時代、多くの仲間の命を奪った憎むべき対象であると同時に、自らの力を過信し過ぎた愚かな人間であるリンクスは、まさに嘲笑の対象でもあったからだ。
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