1st mission ~Walpurgis Night~

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 やがてフェンリルは雲を抜け、俺は地上を確認する事が出来た。  俺の目は高空から一機の、おそらくは哨戒機だと思われる浮遊型無人兵器を確認した。  俺の目とは則ちフェンリルの眼。その狼達の瞳は狡猾にも着実に獲物を捕らえていた。  此処で見過ごすにせよ破壊するにせよ、何れにしても敵に察知されるのは免れない。だが破壊した場合は、こちらの襲撃情報がテロ組織の本隊にまで伝播する時間を僅かながらに引き延ばす事が出来るはずだ。  俺は咄嗟に破壊する事を選んでいる。迷っている暇など無い。フェンリルの左手に持ったスナイパーライフルを構え、そして獲物に照準を合わせた。素早く、されど焦らずに。  獲物を照準に捉えた瞬間、俺は引き金を引いている。銃口から高速徹甲弾がライフリングに添ってマズルフラッシュとともに吐き出された。たった一度の銃声。たった一発の凶弾。  その凶弾は超高速で獲物に到達し、急所を捉えて一瞬で息の根を止める。つまり、哨戒機は爆発もせずただ静かに沈黙した。  狙撃……これは養成施設での訓練の時、唯一秀でた科目だった。俺が唯一他のリンクス達を上回る才能。  俺は心の中で呟く。上手くいった、と。しかし、まだまだ気を抜くことは出来ない。  たかが無人の哨戒機一機だ。誰でも……ノーマルでも出来る。ネクストに乗っているからには、ネクストでしか出来ない仕事をしなければならない。俺はフェンリルの眼を使って辺りを見回した。
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